
ガラス越しの恋人
教会へと続く石畳の道は、サリの足音を静かに反響させる。朝の光が木々の間から差し込み、オレンジとピンクに染まったボブヘアを優しく照らした。海のような青い瞳が、どこか遠くを見つめている。可愛らしいフリルのついたブラウスとスカートは、いつもの彼のスタイルだ。 教会の扉を開けると、ひんやりとした空気がサリを包む。石造りの壁は静寂を吸い込み、微かな埃の匂いが鼻をくすぐった。ステンドグラスから差し込む光が、床に色とりどりの模様を描き出す。サリはゆっくりと祭壇へと歩みを進めた。 奥には、魔法がかけられたガラスの棺が安置されている。その中に眠るキアラは、金色の髪を持つ美しい青年——だが、サリは知っている。キアラは女性だ。事情があって男装していたのだろう。サリはそう考えて、あえて「王子様」と呼び続けている。 棺に近づき、サリはそっとガラスに触れた。キアラの顔は安らかで、まるで眠っているだけのようだ。しかし、その眠りは深い呪いによって閉ざされ...
Story context
World description
文明は昔の方が進んでいたかもしれない緑豊かで、魔法が使える世界。 王子様がいる教会は街から少し離れた場所にある。王子様が自然と目覚めることはなく、主人公が呪いを解くまで目覚めない。 主人公は冒険者ギルドで冒険者として色んな依頼を受けている。冒険者ギルドには依頼出来ないようなことを、依頼人から直接依頼(何かを盗んで欲しいとか、ちょっと危ないことなど)を引き受けることもある。
Initial situation
主人公はいつものように教会に向かう。そこには王子様がずっと眠っている。主人公は知っている。王子様の色んな表情、声。もう一度、話したいとずっと思っている。守れなかったと後悔をしているが、周囲には落ち込んでいるのを隠して主人公は明るくずっと振る舞っていて、眠っている王子様に話しかける時も明るく話しかけている。
Objective
冒険をしながら王子様の呪いを解く方法を探し、王子様を目覚めさせる。
Chapter samples
1Chapter 1▾
教会へと続く石畳の道は、サリの足音を静かに反響させる。朝の光が木々の間から差し込み、オレンジとピンクに染まったボブヘアを優しく照らした。海のような青い瞳が、どこか遠くを見つめている。可愛らしいフリルのついたブラウスとスカートは、いつもの彼のスタイルだ。 教会の扉を開けると、ひんやりとした空気がサリを包む。石造りの壁は静寂を吸い込み、微かな埃の匂いが鼻をくすぐった。ステンドグラスから差し込む光が、床に色とりどりの模様を描き出す。サリはゆっくりと祭壇へと歩みを進めた。 奥には、魔法がかけられたガラスの棺が安置されている。その中に眠るキアラは、金色の髪を持つ美しい青年——だが、サリは知っている。キアラは女性だ。事情があって男装していたのだろう。サリはそう考えて、あえて「王子...
教会へと続く石畳の道は、サリの足音を静かに反響させる。朝の光が木々の間から差し込み、オレンジとピンクに染まったボブヘアを優しく照らした。海のような青い瞳が、どこか遠くを見つめている。可愛らしいフリルのついたブラウスとスカートは、いつもの彼のスタイルだ。 教会の扉を開けると、ひんやりとした空気がサリを包む。石造りの壁は静寂を吸い込み、微かな埃の匂いが鼻をくすぐった。ステンドグラスから差し込む光が、床に色とりどりの模様を描き出す。サリはゆっくりと祭壇へと歩みを進めた。 奥には、魔法がかけられたガラスの棺が安置されている。その中に眠るキアラは、金色の髪を持つ美しい青年——だが、サリは知っている。キアラは女性だ。事情があって男装していたのだろう。サリはそう考えて、あえて「王子様」と呼び続けている。 棺に近づき、サリはそっとガラスに触れた。キアラの顔は安らかで、まるで眠っているだけのようだ。しかし、その眠りは深い呪いによって閉ざされている。サリは、キアラと出会った頃のことを思い出す。騎士の訓練に励むキアラの姿、少し照れながら微笑む顔、そして、二人で過ごした短いけれど大切な時間。 「おはよう、キアラ」 サリはいつものように明るい声で話しかけた。 「今日も綺麗だね。…まあ、いつも綺麗だけどさ」 冗談めかした言葉とは裏腹に、サリの心は痛みに締め付けられる。守れなかった後悔が、彼の胸を重くする。彼はそれを隠すように、明るく振る舞ってきた。キアラの前では、特に。 「ねえ、キアラ。そろそろ起きてよ。また一緒に、お茶でも飲もうよ」 サリはそう言いながら、そっとキアラの髪に触れた。金色の髪は、光を受けて輝いている。 「…約束、したじゃないか」 サリの声が、わずかに震えた。彼は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。そして、再び目を開けた時、その瞳には決意が宿っていた。 教会の外から、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
2Chapter 2▾
サリはキアラの髪から手を離し、祭壇の前で深く頭を下げた。 「…必ず、キアラを救ってみせる」 小さな決意を胸に、サリは教会を後にする。扉を開けると、眩しい光が目に飛び込んできた。教会の庭には、色とりどりの花が咲き乱れている。その美しさに、サリは一瞬、心を奪われた。 庭の一角には、手入れされた花壇があり、そのそばに、見慣れない老人が立っていた。彼は庭師だろうか。腰を少し曲げ、熱心に花の手入れをしている。サリが近づくと、老人は顔を上げ、優しそうな笑顔を向けた。 「おはようございます、サリさん」 老人は、サリの名前を知っているようだ。 「おはようございます。…あなたは?」 サリは警戒心を抱きながら尋ねた。この教会は、人里離れた場所にある。見知らぬ人がいるのは不自然だ...
サリはキアラの髪から手を離し、祭壇の前で深く頭を下げた。 「…必ず、キアラを救ってみせる」 小さな決意を胸に、サリは教会を後にする。扉を開けると、眩しい光が目に飛び込んできた。教会の庭には、色とりどりの花が咲き乱れている。その美しさに、サリは一瞬、心を奪われた。 庭の一角には、手入れされた花壇があり、そのそばに、見慣れない老人が立っていた。彼は庭師だろうか。腰を少し曲げ、熱心に花の手入れをしている。サリが近づくと、老人は顔を上げ、優しそうな笑顔を向けた。 「おはようございます、サリさん」 老人は、サリの名前を知っているようだ。 「おはようございます。…あなたは?」 サリは警戒心を抱きながら尋ねた。この教会は、人里離れた場所にある。見知らぬ人がいるのは不自然だ。それに、サリは自分のことをあまり人に話さないようにしている。 「わしは、この教会の庭師じゃ。名前は、ゲンゾウという。…サリさんのことは、いつも神父様から聞いておるよ」 ゲンゾウはそう言うと、手にしていた剪定バサミで、バラの枯れた葉を切り落とした。 「神父様が?」 サリは訝しげに眉をひそめた。神父は、サリがキアラに会いに来ることを黙認してくれているが、それ以上の関わりはないはずだ。 「ええ。サリさんが、いつも王子様のことを想って、お参りに来られると。…本当に、優しいお方じゃ」 ゲンゾウは、心底感心したように頷いた。その言葉に、サリは少し戸惑った。彼は、ただキアラを救いたいだけなのだ。優しい人間だと思われたいわけではない。 「…別に、優しくなんか」 言いかけた言葉を、サリは飲み込んだ。どうせ、言っても無駄だろう。ゲンゾウは、サリのことを優しい人間だと信じているのだから。 「ところで、ゲンゾウさん。何か、変わったことはありませんでしたか? 最近、このあたりで」 サリは、本題を切り出した。彼は、キアラの呪いを解く手がかりを探している。そのためには、どんな些細な情報も見逃すことはできない。 ゲンゾウは、少し考え込むように顎を撫でた。そして、ゆっくりと口を開いた。 「そうじゃな…。最近、森の中で、見慣れない植物を見かけるようになったのう。毒々しい色をしておって、気味が悪い」 その言葉に、サリの心臓がドキリと高鳴った。呪いと、毒々しい植物。何かが繋がるかもしれない。 ゲンゾウはサリの顔をじっと見つめ、何か言いたげな表情をしている。
3Chapter 3▾
サリはゲンゾウの視線を受け止め、いつもの明るい笑みを浮かべる。心の奥底で渦巻く焦燥を押し隠し、軽やかな声で言葉を紡ぐ。 「ゲンゾウさん、ボクがその植物のこと調べてみるね。教えてくれてありがとう!」 その言葉に、ゲンゾウの顔がぱっと輝く。腰を曲げた体を少し起こし、満足げに頷きながら手を振り返す。 「うむ、頼んだよ、サリさん。気をつけてな。あの森は、最近様子がおかしいからのう」 サリは小さく手を振り、庭の小道を軽やかに進む。色とりどりの花々が風に揺れ、甘い香りが鼻先をくすぐる。教会の門をくぐり抜けると、木々が密集した森の入口が視界に広がる。陽光が葉ずれの隙間から差し込み、地面にまだらな影を落としている。 足取りは自然と速くなる。フリルのブラウスが風に翻り、スカートの...
サリはゲンゾウの視線を受け止め、いつもの明るい笑みを浮かべる。心の奥底で渦巻く焦燥を押し隠し、軽やかな声で言葉を紡ぐ。 「ゲンゾウさん、ボクがその植物のこと調べてみるね。教えてくれてありがとう!」 その言葉に、ゲンゾウの顔がぱっと輝く。腰を曲げた体を少し起こし、満足げに頷きながら手を振り返す。 「うむ、頼んだよ、サリさん。気をつけてな。あの森は、最近様子がおかしいからのう」 サリは小さく手を振り、庭の小道を軽やかに進む。色とりどりの花々が風に揺れ、甘い香りが鼻先をくすぐる。教会の門をくぐり抜けると、木々が密集した森の入口が視界に広がる。陽光が葉ずれの隙間から差し込み、地面にまだらな影を落としている。 足取りは自然と速くなる。フリルのブラウスが風に翻り、スカートの裾が優しく肌を撫でる。サリは周囲を警戒しつつ、頭の中で情報を整理し始める。毒々しい色の植物……確か、魔物系の植物じゃなかったかな。記憶を辿ると、冒険者ギルドで耳にした噂が浮かぶ。古い遺跡の近くに生える、呪いの残滓を吸い取るような株。触れる者を幻惑し、時には命を蝕むという。キアラの呪いと関係があるかもしれない。胸が高鳴り、期待と不安が交錯する。 森の入口に差し掛かると、空気が一変する。湿った土の匂いが濃くなり、鳥のさえずりが遠のいていく。サリは木々の間を抜け、奥へと進む。足元に絡まる蔦を軽く払い、視線を鋭く巡らせる。ゲンゾウの言葉通り、木陰に不自然な影がちらつく。紫がかった茎に、黒ずんだ葉脈が浮かぶ……あれか。 サリは立ち止まり、息を潜めて観察する。植物は微かに脈動し、周囲の魔力を貪るように揺れている。指先で軽く触れようか迷うが、まずは周囲を確認する。森の奥から、かすかな風が不穏なざわめきを運んでくる。サリは身構え、ゆっくりと近づく。植物の根元に、奇妙な結晶が埋もれているのが見える。それは、淡く光を放ち、呪いの気配を思わせる。 突然、植物の葉が震え、毒々しい胞子が舞い上がる。サリは素早く後退し、風向きを変える魔法を放つ。胞子は散らされ、地面に落ちて溶け込む。心臓の鼓動が速まる中、サリは植物の全体像を記憶に刻む。この手がかりを、キアラに届けるために。 森の深部から、低い唸り声が響き始める。サリは耳を澄ませ、体を低くする。




